北欧家具の魅力とはどんなものがあるでしょう?
私はモダンで洗練された家具のデザインとあわせて自然の木の温もりや明るい日差し、アットホームな優しいイメージがあります。
例えばハンス・ウェグナーのデザインYチェアなどは北欧家具のイメージを語る際、木の温かみや優しいフォルムなどもっとも印象に残るモデルと言えますよね。
こうした一般的な北欧家具のイメージを考えた時、ポールケアホルムが手掛けたデザインは異質なものに映ります。
そこで今回は、ポールケアホルムが手掛けたチェア、PK22と現代に残した意匠についてご紹介していきます。
ポールケアホルムとは?
引用 : https://fritzhansen.com/ja-jp/products
ポールケアホルムはデンマーク出身のデザイナー(1929-1980)であり、おもに「メタルと革」を用いたデザインを多く残しています。
家具職人のもとで修行した後1950年から1952年にかけてハンス・J・ウェグナーの事務所に勤務。
その後1952年から1953年にフリッツハンセン社で勤務する傍ら、デザイン学校の講師を勤めるなど実務と教育の両立を実践していました。
チェアPK22をデザイン
引用 : https://fritzhansenimagecdn.azureedge.net/
1955年、コペンハーゲン王立美術アカデミーにて講師を勤める傍ら、ハンス・J・ウェグナーの事務所で共に働いたE・コル・クリステンセンと共同作業の末伝説のチェア、「PK22」を発売。
「モダン史上に残る傑作」として語り継がれるようになります。
何故そのような評価となったかについて、チェアの特徴をご紹介していきます。
一切の妥協を許さない姿勢
ポールケアホルムの手掛けた作品に共通する特徴のひとつに「一切の妥協を許さない姿勢」があります。
当時の技術では最先端のスチール、革などを集め極めて精巧な家具を生み出していました。
メタルと革で優しさを表現
こうした素材を用い、完璧なデザインをもとに製作された作品ですが、不思議とフォルムやデザインから感じる「温かみ」があるのも特徴です。
このデザインを的確に表現した言葉に「less is more」=「あらゆる要素を削ぎ落とすことで生まれる豊かさ」があります。
この言葉こそが、彼のデザイン哲学を物語る一言と言えるのではないでしょうか?
モダニズムの原点とは?
ポールケアホルムを支えたデザイン哲学について、いくつかの時代背景を考えてみたいと思います。
その秘密を解き明かす鍵として、1910年代から続く「モダニズムの思想」があります。
モダニズムの思想とは、バウハウス時代から続くミニマリズムに基づいた設計思想です。
その根拠としてデンマーク出身の彼が最も影響を受けたデザイナーの一人が「ミース・ファン・デ・ローエ」なのです。
バウハウスについての記事はコチラ↓
PK22が生まれた理由
歴史に残る名作チェアPK22はシートのレザー、スチールで構成された極めてシンプルなデザインですが、この作品を作製するにあたって最も影響を受けたデザインがミース・ファン・デ・ローエの「バルセロナチェア」でした。
現在バルセロナチェア、PK22はいずれもニューヨーク近代美術館(MoMa)に納められています。
彼らの共通するデザイン哲学は、国や国境を越えて伝わるモダニズムの思想に基づいた作品と言えるでしょう。
ケアホルム生涯の作品について
彼の作品には全て「PK+数字」で作品名は付けられています。
中でも特筆すべき作品をご紹介していきます。
幻のデザインチェア
引用 : https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/.jpg
PK0・1951年
アルネ・ヤコブセンとの共同開発で設計されたPK0。
このチェアが設計された頃、フリッツハンセンではヤコブセンデザインの「アリンコチェア(アントチェア)」の製品化を優先したことから、発売されない幻のチェアとなっていました。
1996年、フリッツハンセンではこのPK0を600脚限定で生産されました。
アルミを用いた有機的な曲線を描く美しいデザインを堪能できるまさに名作チェアですね。
モダン史上に残るダイニングチェア
引用 : https://admin-test.chstest.dk/globalassets/products/chairs/pk1/
PK1・1955年
妻との自邸用にデザインされたダイニングチェア、PK1。
現在ではデンマークを代表する「カールハンセン&サン」より購入することができます。
どの角度から見ても美しいチェアは、座る方を優しく包み込む座り心地。
まさにLess is Moreな豊かなデザインを是非楽しんでみてくださいね。
CARL HANSEN & SON (カールハンセン&サン)PK1(ピーケー1)/ フラッグハリヤード / ブラックパウダー塗装スチール脚 / ナチュラル |
ケアホルムを代表するチェア
引用 : https://encrypted-tbn0.gstatic.com/images/
PK22・1955年
最高級の革とメタルを持ちいて製作されたPK22は彼の生涯を通じて貫かれたデザイン哲学が濃縮されたチェア。
シートが籐編みのタイプもあり、こちらは北欧家具ならではの優しさを更に感じる事ができます。
彼が残した意匠を自宅の空間で是非お楽しみください。
まとめ
今回はポールケアホルムが手掛けたチェア、PK22と現代に残した意匠についてご紹介しました。
彼のデザイン哲学にあった「あらゆる要素を削ぎ落とすことで生まれる豊かさ」について、スチールや革で表現する事ができる唯一無二の存在である事が分かりました。
素材は異なりますが、木の持つ温もりを大切にデザインする北欧モダン家具のイメージと結びつく事も理解できましたね。
彼の作品は現代でも購入する事ができますので、自宅の空間で是非楽しんでみて下さい。
ケアホルムが残した「モダニズムの意匠」は、今後も語り継がれて行くことでしょう。