家具や建築史で語り継がれる「ル・コルビュジエ」をご存知でしょうか?
彼は現代の基礎となる建築様式と併せ、モダンで洗練された「LCシリーズ」を手掛けたモダニズムの元祖と言える建築家、デザイナーです。
私は家具の業界で仕事に携わる関係上、「カッシーナ社のデザイナー」というイメージが強かったのですが、近代様式の建築を発明した偉大な建築家でもあった事実に驚かされます。
そこで今回は、モダニズムの元祖、ル・コルビュジエの歴史に残る意匠についてご紹介していきます。
1920年頃から始まるモダニズムの歴史についても、併せてご覧下さいね。
モダニズム建築の巨匠・コルビュジェ
現代の建築やデザインに多くの功績を残したル・コルビュジェはモダニズム建築も巨匠と言われています。
また、この時代に同じくデザインや建築の発展に貢献したフランク・ロイド・ライト、ミース・ファン・デル・ローエ・ヴァルター・グロピウスと共に「近代建築の四大巨匠」として語り継がれています。
彼の残した意匠とは、どのようなものだったのでしょうか?
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モダニズム全盛期の建築デザイン
建築に於けるモダニズムを表現するきっかけとして、産業革命後のイギリスを中心としたウィリアムス・モリスの主導による「アーツアンドクラフツ運動」があります。
歴史や伝統的な手法から脱却し、新たな思想を掲げた建築家やデザイナーが活躍した時代、コルビュジェは建築家としての革命を起こす事になります。
石造りの文化が残るヨーロッパ建築
コルビュジェの建築家としての活動はフランスを中心に行われました。
当時のヨーロッパでは「石造り」の文化を色濃く残していて、古代ローマ時代、ルネサンスから続く建築様式が重んじられてきました。
ゴシック様式など中世の歴史的建造物も、石造りが中心でしたね。
新たな工法、ドミノシステムとは?
こうした歴史的工法の石造りに替わり、新たな素材として鉄やコンクリートを建築に採用する技術が生まれました。
これらの新素材では、柱、梁といったシンプルな構成で間取りを設計できる事や、大きな窓や開口部を新たに設計できるようになります。
こうしてル・コルビュジェは新技術であるRC工法を積極的に用いた建築手法「ドミノシステム」を1914年に発表。
従来になかった斬新な建築法による「モダニズム建築」を手掛ける事になります。
独自の寸法計測の基準も発明
ドミノシステムと合わせて生まれた、新たな寸法を計測する基準も発明されました。
これは人間の身体のサイズを基準とした黄金比で導き出される寸法で、「モデュロール」と名付けられました。
これにより廊下や階段といった建物に必要な構成物について、簡単かつ正確に採寸できるようになりました。
モデュロールはコルビュジェが築いた現在の建築基準の発明のひとつでもあります。
近代建築の基礎となる原則も
ル・コルビュジェは新たなモダニズム建築の設計思想のもと、高層ビルを建て周辺に緑地化を勧める新たな都市計画「輝く都市(1930)」を発表。
現代の都市計画にも影響を与えるヴィジョンを計画しました。その後提唱された「近代建築の五原則」では、近代建築の基礎となる条件が記されています。
・近代建築五原則
引用 : 【近代建築の五原則】
ピロティ:建物を持ち上げることで生まれる1階部分の空間。
屋上庭園:屋上は都会でも日当たりがよく、植物を育てることができる。
自由な平面:構造上の壁が必要なくなったので、部屋のレイアウトがより自由に。
水平連続窓:光を取り入れるために不可欠であるが、石積みの建築では作れなかった。
自由な立面:構造上の壁が必要なくなったので、建物の正面の壁も自由にデザインできるように。
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/
上記の五原則を基に、コルビュジェは1931年サヴォア夫妻用に建てられた「サヴォア邸」を建てます。
このサヴォア邸は、「20世紀最高の住宅」と評価され現在フランスの文化遺産としても登録。
また邸宅の設計と併せてデザインされた「コルビュジェ・チェア」などインダストリアルデザインもこの頃から手掛けるようになります。
建築と合わせたコレクション
多くの建築物を手掛けたコルビュジェですが、建物に合わせデザインされた家具もモダン史に残る名作を残しています。
これらの家具はGRANDCONFORT(大いなる快適)」と呼ばれ、特にLCシリーズはカッシーナ社より発売され、現在も続く大ヒット商品となっています。
芸術的価値の高い作品
ル・コルビュジェのイニシャルを取って名付けられた「LCシリーズ」。
このLCシリーズは1から8まであり、多くのインダストリアルデザインを手掛けた彼の代表作がナンバリングされています。
LC-1 スリング・チェア
自由に動く椅子として親しまれている椅子。
コルビュジェのオフィスで働いていた建築家シャルロット・ペリアン、スイスの建築家ピエール・ジャンヌレとの共同作品となります。
「sling(スリング)」とは赤ん坊を抱っこする際の布に因んで付けられました。
LC-2 ・LC-3
直線的なステンレスフレームと牛革で構成されたコルビュジェの代名詞とも言われるソファ。
サイズにゆとりを持たせたLC-3は更に寛ぎ感をプラスしています。
LC-4
自由に角度を変えられるリラックスチェアとして設計されたLC-4。
シャルロット・ペリアンがコルビュジェの発想を元に快適に過ごす事ができる座り心地を追求し設計されたモデル。
この他LC-5(ソファー)、LC-6(ダイニングテーブル)と続いたシリーズは、LC-7(ダイニングチェア)いずれも住空間に合わせて設計され、モダニズムを表現したデザインとして高く評価されています。
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都市計画の実現に向けて
第二次世界対戦の後、コルビュジェはドミノシステムを始めとした都市計画の着手に向けて動き始めます。
ここでは都市計画の実現に向け、実施された施工についてご紹介していきます。
モダニズムを表現する集合住宅
フランス南部の都市、マルセイユにて1945年より次々と建てられた集合住宅「ユニテ・ダビタシオン」。
都市計画を始めるにあたり、多くの人が住む住空間を設計する事で、コルビュジェは着実に建築のデザインを実践して行きました。
インドで実現した都市計画
第二次世界大戦が終戦を迎え、欧米の植民地であった国々は独立を果たすようになりました。
この当時、欧米の植民地であったインドも独立を果たすのですが、当時のネルー首相は「チャンディーガル」と呼ばれる新しい都市の建設をコルビュジェに依頼します。
42のセクターに分けられた新しい都市は、ホテルやショップ街など、生活に必要な住居以外にもさまざまな建物が建設され、文字通り都市を作る事に成功しました。
まとめ
今回は、ル・コルビュジエの歴史に残る意匠についてご紹介しました。
ご紹介した意外にも、たくさんの建築物を残したル・コルビュジェは、まさにモダニズムの元祖とも言える存在でした。
今日我々が当たり前のように暮らすマンションや都市国家の礎を築いた偉大な建築家、という意味が分かりましたね。
また、ドミノシステムを始めとした独自の基準作りについても、この時期ルネサンス期を彷彿させる発明があったのだと理解できました。
「住宅は住むための機械である」—著者『建築をめざして』の中にコルビュジェが残した名言があります。
これは我々の住居について、「快適に住むための機能について追求すべきである」という意味が込められています。
快適で洗練されたモダニズムを体現したル・コルビュジェの思想は、今日の生活を見守り続けています。