お洒落なインテリア雑誌やショップなどで「ミッドセンチュリー」という言葉を耳にする事があります。
私は家具販売をしていますが、普段扱いがないのでざっくりと「1960年代」のイメージが強い印象です。どこか懐かしくて、ポップなイメージもありますよね。
ミッドセンチュリーは正確には1940〜1960年代にデザイン、製造された家具やインテリアの事を指します。この時期は音楽やファッションなど、さまざまな文化が発展した時期でもあります。
そこで今回は、ミッドセンチュリー家具の歴史と、ヴィンテージ感を楽しむコツについてご紹介していきます。
ミッドセンチュリーを勉強しつつ、普段のお部屋に取り入れて楽しんでみましょう!
ミッドセンチュリー家具の歴史とは?
実はミッドセンチュリー家具という名称自体、「世紀の真ん中」というざっくりとした名称なので、どの国の家具を指すのかが難しいところなんです。
しかし当時の時代背景を考えると、アメリカの技術革新が大きく関係している事がわかります。
アメリカが家具の中心になる時代
1945年に終戦した第二次世界大戦。大戦後、世界の国の中で取り分け力を持った国がアメリカでした。
この当時、戦争中に新たな武器や兵器用に開発された新素材・技術が家具業界にも持ち込まれるようになりました。代表的なものは以下の2点となります。
・FRP
ガラスや最近ではカーボンなど、プラスチックに異素材の繊維を入れて強化したもの。軽くて丈夫、劣化しにくい特徴があります。
・整形合板
薄くスライスした板を重ね、熱を加えて曲げ加工したもの。曲げた箇所は強度が強く、歪みや反りが出にくいメリットがあります。
新しい技術で家具をデザイン
これらの新素材・新技術に合わせて設計された家具が、現在のミッドセンチュリー家具となります。
また、当時の時代や空気感に合わせた家具をデザインする新たなデザイナーが躍進するきっかけにもなりました。
ミッドセンチュリー家具のデザイナー達
ここではミッドセンチュリー家具を代表するデザイナーと、その代表作品をご紹介していきます。
イームズ夫妻
ワシントン大学の建築科を出たチャールズは、クランブルック美術アカデミーで当時アーティストとして駆け出しだったレイと出会い、1941年に結婚。
ともにデザイナーとして活動を開始し、50年代にはそれまでなかった斬新かつ画期的な家具をデザインしていきます。
また、家具のデザイナー以外のディスプレイやグラフィック、写真といったデザインに加え建築や映画制作まで幅広い分野で功績を残しました。
ミッドセンチュリーを代表するデザイナーとして、多くの作品を通じてその名を残しています。
イームズの代表作品をご紹介
ミッドセンチュリー家具といえばイームズ夫妻が真っ先に思い浮かびますよね!
今回は数あるイームズ夫妻デザインの家具の中から代表作品を2機種ご紹介します。
板座の革命的デザインチェア
プライウッドチェア
タイム誌の「20世紀最高のデザイン」にも選ばれたイームズ夫妻のデザイン史に残る名作。当時の先端技術、整形合板を採用し大量生産が可能な「価値あるデザイン」を生んだモデルと言えるでしょう。
普段家具を販売している私が感じるのはミッドセンチュリー家具で1番印象に残るデザインだと思います。
チェアを見た瞬間に感じるどこか懐かしいフォルム、モダンでありながら優しいカーブを描くフォルムが、イームズ夫妻のお人柄を示しているように感じます。
優雅なひと時を楽しめるラウンジチェア
ラウンジチェア&オットマン
19世紀のクラブチェアを当時のイームズがモダンに生まれ変わらせたチェア。
その後のラウンジチェアの在り方を一変させた高級感と寛ぎを楽しめるチェアとして、こちらも20世紀を代表するデザイン。
こちらのラウンジチェアの素晴らしい点は、スクウェアなクッションと整形合板のカーブのバランスです。モダンデザインはシンプルに削ぎ落とす為、ともすればフォルムに緊張感が出る事があるように思います。
しかし「寛ぎ」という本来の目的を忘れないイームズのデザインは、どこかチャーミングな癒し要素がありますよね。寛ぎを楽しみたい方に圧倒的に支持される理由は、案外そんなところにあるのかも知れません。
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ジョージ・ネルソン
ハーマンミラー社の創業者、D.J. デプリーの声掛けにより同社のディレクターを担当。
代表作はプラットフォームベンチ、ボールクロック、マシュマロソファなどいずれも世界的に評価の高い家具をデザイン。イームズ夫妻が無名の頃からその才能を理解し、同社のデザイナーに推薦しました。
他にもイサム・ノグチ、アレキサンダー・ジラードなど才能ある世界各国のデザイナーを起用しハーマンミラー社をアメリカを代表する世界有数の家具メーカーへと導きました。
ジョージネルソンの代表作をご紹介
彼もまたミッドセンチュリーの父と呼ばれえる懐の深さを感じさせる名作を世に残しています。
中でも最も有名な2作品をご紹介します。
チェアの価値観を変えた作品
ココナッツチェア
三角形の現在見ても斬新なフォルムと極細のスチールレッグが美しいチェア。それまでのチェアの常識を大胆に変えた傑作として現在も世界中の美術館のコレクションに納められています。
シンプルな中に優雅さと余裕を感じる事のできるモダンチェアですね。
ポップでキュートなソファ
マシュマロチェア
ミッドセンチュリー家具の中でも一際ポップな印象のチェア。可愛い見た目と驚くほど快適な座り心地に、当時も現在もこのチェアの魅力に虜になります。
カラフルなクッションのバージョンが特にミッドセンチュリー時代の明るさと懐かしさを感じさせる逸品です。
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アレキサンダー・ジラード
デトロイト出身のアレキサンダー・ジラートはイームズ夫妻の推薦でハーマンミラー社のテキスタイル部門ディレクターに抜擢されました。
ポップな原色やモノトーンの色使いやユーモア溢れるキャラクターを使ったアート感溢れるデザインが特徴。幾何学模様をあしらったパターン柄も、この時代のモダンアートを感じさせてくれる作品です。
また、短い期間でしたが家具もデザインされていました。その貴重な作品をご紹介します。
表情をユーモアたっぷりに表現
目から鼻にかけてをグラフィックで表現した、なんともユーモラスなグラフィック。
ニューヨーク近代美術館のコレクションに納められているこちらの作品は、同社のグッズとしても購入できます。
ファブリックが印象的なソファ
スリーパッセンジャーズソファ
約2年間ほどしか生産されず、ジラードデザインのソファとしてミッドセンチュリー愛好家の間では有名なソファ。
肘からベースにかけた薄いフレームは優雅な曲線を描いていますね。クッションのカラーもポップで印象的。現在市販されていたら、間違いなく多くの方が購入していたでしょう。
現在僅かな期間製造されていたロットは、希少価値が高く高価な値で取引きされています。
時代を代表する他国のデザイナーたち
アメリカを中心に発展したミッドセンチュリー家具。
同時期に日本や北欧といった国々でも家具を通じて新たな需要が生まれ、著名な建築家やデザイナーが生まれました。
日本ではイームズ夫妻とも親交のあった柳宗理や、「北欧モダン」を発展させた中心人物、ハンス.J.ウェグナーなどが代表的なデザイナーです。
こちらはまたの機会にご紹介していきますね。
ミッドセンチュリー時代の前進、「バウハウス」に関する記事もご覧下さい!
※あわせてご覧下さい↓
ミッドセンチュリー2大ブランド
ミッドセンチュリー期に家具デザイナーを支えたブランドも当時の立役者ですよね。
アメリカではKnoll(ノル社)、Hermanmiller(ハーマンミラー社)の2社が家具の市場を独占していました。
高級家具ブランド、ノル社
Knoll社は1938年にハンス・ノル氏により設立。ドイツ発祥のバウハウスの思想を色濃く残した高級家具ブランドです。
バルセロナチェアで有名なミース・ファン・デ・ローエもバウハウス出身ですが、ノル社の代表的なデザイナーの1人です。
他にもマルセル・ブロイヤーや日本ではジョージ・ナカシマなどが広く知られるデザイナーとして有名です。
オフィス家具のハーマンミラー社
今回ご紹介しましたイームズ夫妻やジョージ・ネルソンがミッドセンチュリーを代表するモデルを発表する傍ら、人間工学(エルゴノミクス)を研究しオフィス家具の発展にも貢献したハーマンミラー社は、アメリカ国内ではオフィス家具メーカーのイメージも強いブランドです。
1994年には、現代のオフィスチェアの草分けとして知られる「アーロンチェア」を発売。優れたデザインと合わせて、「問題を解決するデザイン」というシンプルに機能を追求する同社のコンセプトが色濃く反映されたブランドカラーが特徴です。
まとめ
今回は、ミッドセンチュリー家具の歴史とヴィンテージ感の楽しみ方のついてご紹介しました。
ミッドセンチュリー家具は、第二次世界大戦後のポップで明るいアメリカ家具のイメージが色濃く出ていたように思います。新素材や技術を使った家具や、イームズはじめモダンデザインが大きく発展したこの時代。
現代でもどこか懐かしく、新しい感覚で人気が高理由もよく分かりました。それぞれのデザイン家具をよく見てみると、曲線や丸みのある造形が多く、多くの人々に愛される秘密なのかなとも。
使う人の便利さや使い勝手を計算し、ユーモラスに仕上げたミッドセンチュリー家具。お部屋にさりげなく取り入れ、当時の文化も併せて楽しんでみて下さいね!
ミッドセンチュリー後のインテリアの時代を考察する、「ポストモダン」の時代も合わせてご覧下さい!